お知らせ
2025/08/27

相談行方不明の相続人がいて、遺産分割協議ができない時

【相談事例】
 父が亡くなり、遺産分割手続きを進めたいが、兄が長年行方不明になっていて相続
手続きが中断してしまい困っているというケース。


【不在者財産管理人について】
 上記のようなケースに対応するため、裁判所に不在者財産管理人の選任申立てを行
い、行方不明者に代わって遺産分割協議に参加する人を選任してもらう方法がありま
す。
 不在者財産管理人とは、家庭裁判所の監督のもとに、不在者の法定代理人として不
在者のために適切に財産を管理する職務を負う人のことで、裁判所に選任されます。
 不在者財産管理人は、権限としては原則として賃料を徴収する、家屋を修繕する、
期限が到来した債務を弁済する等の、不在者の財産を管理する行為しかできません
(民法103条)。財産の売却等の処分行為を行う時には、裁判所の許可を得る必要が
あり、遺産分割も処分行為にあたりますので、裁判所の許可を得て遺産分割協議に参
加する必要があります。
 不在者財産管理人は不在者本人の利益のために財産管理を行う必要があり、本人に
不利な財産管理はできませんので、遺産分割協議の内容が法定相続分を下回るような
遺産分割協議ですと裁判所の許可が得られないでしょう。
 また、不在者財産管理人は、裁判所から弁護士等の法的専門家が選任されることも
多いですが、利害関係がない人であれば候補者になれるので、利害関係のない親族等
にお願いし、候補者となってもらい選任されるケースもあります。ただし、不在者の
財産を不当に消費したりすることは不正行為として許されず、仮に不正行為が行われ
れば、賠償責任や刑事責任を追及されることもありますので、注意が必要です。

【不在者財産管理人の終了時期】
  遺産分割協議が終了しても、当然に不在者財産管理人の職務が終了するわけでは
なく、下記の取り消し事由がある場合でなければ選任取消審判が出されず管理業務
は終了しません。
①本人が自ら財産を管理することができるようになったとき(家事法147条)
②管理すべき財産がなくなったとき(同)
③その他財産の管理を継続することが相当でなくなったとき(同)
④本人が委任管理人を置いたとき(民法25②)

ですので、これまでは不在者の預金や現金が残っている場合、財産が存在する限
り終了とならず管理を継続している事案も存在していましたが、令和5年4月1日
施行の家事事件手続法の改正により、不在者財産管理人は供託できるようになりま
した(改正後家事事件手続法146条の2)。
 供託により、管理すべき財産がなくなったときは、家庭裁判所は不在者財産管理
人選任審判を取り消すこととなり、管理業務は終了となります。

【さいごに】
  行方不明の期間によっては(7年以上)、失踪宣告の申立てを行うという選択肢も
あります。
  失踪宣告が行われた場合、その者は死亡したものとみなされ、失踪宣告のなされ
 た不在者について相続が開始することとなります。
  ご家族としては、死亡したものとする扱いを心情的にためらわれるというケース
もあると思われます。不在者財産管理人、失踪宣告それぞれ申立ての要件や、その
後の法的効果も異なり、行方不明の相続人のいる場合の手続は専門性も高いため、
まずは専門家への相談により適切な手続きのサポートを得ることをお勧めします。

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