1 はじめに
実家が空き家のままで、長年放置されている。固定資産税はなんとなく自分が払い続けているが、このままでいいのか――次の世代にも「負の遺産」として引き継がれてしまうのでは……。
両親が亡くなった後、誰も住まなくなった家を前に、漠然とした不安を抱えている方は少なくありません。
特に、相続人が遠方に住んでいたり、しばらく連絡を取っていなかったりすると、相続に向けて連絡を取ることだけでもハードルが高く感じられるものです。
今回は、そんな状況でも弁護士のサポートを受けることで、心理的負担がなく、スムーズに相続手続と不動産売却を実現した事例をご紹介します。
2 相談内容
相談者は、松戸市にお住まいの男性です。
数年前にご両親が相次いで他界しましたが、両親ともに遺言書は作成しておらず、地方にある実家は空き家のまま放置されていました。相談者は松戸市で長年生活しており、実家に戻る予定もありません。維持費もかさんできたので、できれば実家は売却したいと考えています。
相続人としては、相談者のほかに姉と弟がいます。姉は沖縄、弟は海外に在住しています。メールで「家を売らないか」と連絡してみても、話がなかなか進まず、どうすればよいか分からない状況とのことでした。
3 解決内容
(1)方針
遺言書がない場合、相続財産を売却するためには、相続人全員で遺産分割協議を行い、実家をどのように相続するかを取り決める必要があります。
相続人全員が法定相続分で、実家を3分の1ずつ共有して相続することも可能ですが、そうすると、売却する際にも相続人全員で足並みを揃える必要があります。
そのため、早期解決を目指して、相談者が実家を相続し、他の相続人には代償金(法定相続分に見合った金銭)を支払う方針としました。
(2)当事務所の対応
他の相続人には、弁護士から、実家の評価額の資料を同封して、代償金の金額を提示する等、具体的な遺産分割方法を説明した案内書を送付しました。案内書には、トラブル防止のため、相談者には兄弟間で争う意思はなく、事務的な手続を専門家に任せることで、相続人全員の負担が軽減されることを強調して記載しました。
他の相続人から、細かい問い合わせの電話があっても、全て弁護士が回答するので、相談者は直接兄弟と「金の話」をして心理的負担を感じることもなく、無事、希望する内容で遺産分割協議書を調印することができました。
(3)不動産の売却
不動産を売却する際には、当事務所から適切な仲介業者や司法書士等を相談者に紹介することもできます。
今回の相談者にも仲介業者等を紹介し、必要な資料は直接弁護士から仲介業者等に提供できたため、相談者は事務的な負担も少なく実家を売却することができました。
4 さいごに
他の相続人にとっても、弁護士が間に入ることで、やるべきことが整理され、円満相続が実現できました。
相続人と連絡が取りづらいなどの事情があると、先延ばししがちです。しかし、2024年4月1日からは、相続登記が義務化され、所有権の取得を知った日から3年以内に正当な理由なく相続登記をしない場合は、10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の対象となります。2024年4月1日より以前に相続が開始している場合も、3年の猶予期間がありますが、義務化の対象となります。
今回のように、弁護士が間に入ることで、連絡や手続の物理的・心理的負担を大幅に軽減することができます。
「どう進めたらいいか分からない」「他の相続人と連絡が取りづらい」という場合でも、ぜひ一度、当事務所にご相談ください。
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